これまで歯肉退縮についてお話をしてきましたが、今回はその治療法としての歯周形成手術(特に根面被覆術)についてです。歯肉や歯槽粘膜の形態・質・位置を改善することを目的とした歯周外科の総称です。主な目的は以下の4つです。
これまで歯周形成外科において、歯肉退縮治療の主な目的は「根面被覆」でした。しかし近年の研究から、歯肉の厚みを増やすことで長期的な安定性は保証されやすいことが明らかになっています。
歯肉退縮は静的な欠損ではなく、特に歯肉が薄く、角化歯肉が不足している部位では、将来的に進行するリスクが高いことが知られています。この背景から注目されるようになったのが、歯肉フェノタイプという概念です。歯肉フェノタイプ(歯肉の厚み・角化歯肉幅・組織の質)を改善することを目的とした治療は、フェノタイプモディフィケーションセラピー(PMT)と呼ばれ、現代の歯周軟組織治療において重要な位置を占めています。
今回の患者さんは、全顎的な歯肉退縮と重度の知覚過敏症に悩まされ、これまでに考えられるあらゆる非外科的治療を行っても改善が得られなかったため来院されました。(重要なのは知覚過敏症を改善するためにまず非外科・非侵襲的なアプローチを検討し、頼みの綱として外科処置を検討すべきです。)そこで本症例では、口蓋から自家結合組織を採取し、全歯同時の根面被覆/PMTの治療を行いました。治療から1年半が経過した現在も、歯肉退縮の明らかな改善、歯肉の厚みの増加が安定して認められています。
歯肉の厚みを増加させることは、単なる審美的改善にとどまらず、将来的な歯肉退縮の進行を予防し、長期的な組織安定性を確保するうえで極めて重要です。本症例は、根面被覆だけでなくPMTを併用することの意義を示す一例と考えられます。


