前回までで歯周病と全身の病気の関連性、特に糖尿病と循環器疾患について説明しました。歯周病はそれだけでなく、呼吸器疾患、口腔がんなどのさまざまな全身疾患とも関連しています。日本の三大死因は悪性新生物(がん)、CVD、肺炎(厚生労働省調べ)となっており、ひいては歯周病が死因に繋がりかねないものとなってしまいます。糖尿病ほど科学的根拠はまだ明確には解明されていませんが、呼吸器疾患も歯周病との関連が示唆されている病気です。
<市中感染型肺炎と歯周炎>
歯周炎の人は肺炎を発症するリスクが高いかについては、研究は限られており、重度の歯周炎が有意に関連し、それらの患者は健康な患者や軽度の歯周炎の患者と比較して、肺炎に罹患する確率が最大で3.6倍高いと報告した研究があります (De Melo Neto et al., 2013).
歯周炎かつ肺炎の患者は、肺炎の合併症をより多く経験するかについては、高齢者を対象とした研究において、歯周ポケットが4mm以上の歯が10本以上ある場合、9本未満の歯周ポケットがある場合と比較して、肺炎関連死のリスクが3.9倍有意に増加することが報告されています (Awano, 2008)。
歯周炎の治療により、肺炎の発生を減らすことができるのかについては、歯周病治療が肺炎のリスク低減と関連すると報告した研究は1件のみです(L. C. Yang, 2020)。ですが、2つの病気の関連を唱える有力な説として、口腔内の微生物が口腔内の分泌物とともに吸引され、肺の炎症や内皮機能障害を悪化させる役割が提唱されています(Hasegawa 2014; Imai 2021)口腔衛生状態が悪いとその細菌を飲み込んで肺に到達してしまいかねないというのは容易に想像がつきますね。しっかり歯を磨きましょう!
<歯周炎とCOVID-19(新型コロナウイルス)の関係>
現在のところ、歯周炎とCOVID-19感染症の診断との間に正の関連があることを裏付ける研究がいくつかあります。ある研究では、体重で層別化すると、正常体重の患者に比べ、過体重または肥満の被験者で関連が強いようでした(Larvin 2021)。2つの研究からのデータは、進行した重度歯周炎が、COVID-19性肺炎、入院、ICUへの入院、補助換気の必要性、COVID-19による死亡などのCOVID-19やその合併症の高い発生率と重症度と関連すると報告しています(Gupta 2021, Marouf 2021)。これらの質の高い臨床研究を統計解析した研究(メタ解析)では、歯周炎と補助人工呼吸の必要性は6.24倍、COVID-19による死亡率は2.26倍と、有意な関連性が示されています。しかし現段階では、歯周病治療がCOVID- 19の重症度やその合併症に影響を与えるというエビデンスはありません。
Meyer 2020年の研究によると、30秒間のリステリン クールミント(ジョンソンアンドジョンソン社)による含嗽は唾液中のCOVID-19に効くというデータがあります。是非マウスウォッシュも使いながら口腔、身体共に健康状態を保ちましょう!