歯肉退縮というのは一般的に言うと歯ぐきが下がってしまう病気のことです。通常は歯というのは歯肉でしっかり覆われているんですが色々なリスクなどによって歯根の部分が露出してしまうというのが歯肉退縮の病態になります。具体的には歯冠というのはエナメル質で覆われているんですが歯根はセメント質という部分が一番最外層にきています。このセメント質の露出、もしくはその中の象牙質の露出というのがこの歯肉退縮の状態になります。
歯肉退縮の症状としては主に4つあります。前回は 1.審美障害と2.知覚過敏 について説明しました。
3:根面の虫歯
これは主に高齢者の方々に多いんですが根の部分が露出してしまうことによって虫歯になりやすくなります。歯冠部分というのは最外層はエナメル質という人体で一番硬い組織で覆われているため歯根に比べると強く、一方この根の部分がセメント質もしくは象牙質によって露出してしまうと虫歯のなりやすさもしくは虫歯の進行のしやすさというのが加速してしまいます。歯肉退縮は根面の虫歯に対して強いリスク因子だというのが他の研究でも言われています。
4:くさび状欠損
くさび状欠損ってなんだろう?って思われる方もいらっしゃるかと思いますが、虫歯とは異なり、歯根の露出部分にくさび状に欠損が生じてしまうものです。歯ブラシが強かったり歯ぎしりだったり色々なファクターによって歯の根本の部分が削られてしまうという病気になります。(下図参照)歯肉退縮のおよそ50%がこのくさび状欠損を持っているというようなデータも2010年にあります。
これらのような4つが主に歯肉退縮による症状、疾患につながってくるものになります。この歯肉退縮自体は治療しなくてもいいんですが深刻な歯肉退縮というのは、あるシステマティックレビュー(世界中の関連研究を集めて統計学的解析を行ったデータ)によると例え良く磨けて口腔衛生状態が良くても78.1%の方というのが「治療をしない」とその歯茎の歯肉退縮というのがより悪化してしまうというふうに言われていて、更に79.3%の方たちというのは治療をしないでずっとフォローアップを続けていくと他の場所にも新たな歯肉退縮の部分ができるというふうに言われています。(Chambrone 2016)
このように深刻な歯肉退縮があるような方というのはその治療を考えられてもいいのかなというふうに考えられます。次回はこの歯肉退縮についてのリスク因子についてお話をさせていただきます。
くさび状欠損が歯肉縁にみられる。