前回歯周病と全身の病気の関連性、特に糖尿病について説明しました。歯周病は、糖尿病だけでなく、心血管疾患(CVD, CardioVascular diseases)、呼吸器疾患、口腔がんなどのさまざまな全身疾患と関連しています。日本の三大死因は悪性新生物(がん)、CVD、肺炎(厚生労働省調べ)となっており、ひいては歯周病が死因に繋がりかねないものとなってしまいます。糖尿病ほど科学的根拠はまだ明確には解明されていませんが、CVDも歯周病との関連が示唆されている病気です。
CVDは虚血性心疾患、脳卒中、高血圧、心不全、リウマチ性心疾患、心筋症、心房細動など、多様な病気から構成され多くは動脈硬化症が関連しています。CVDは世界の死亡の主な原因であり、世界の全死亡の32%(WHO、2021年)を占め、年間1790万人の死亡に関与しています。
歯周炎とCVDの関連を支えるメカニズムは、歯周病原因菌の全身血管系への拡散、および血管の炎症(動脈硬化になる)や歯周炎が引き起こす全身炎症性タンパク(CRP: C反応性タンパクなど)のレベルの上昇が考えられています。(Schenkein & Loos, 2013)心臓の手術中に心疾患患者の心血管壁から歯周病原因菌のDNAが検出され歯周病との関連が報告されていたり(Ishihara, 2004)、エビデンスレベルの高いシステマティックレビューという臨床データの統合では歯周炎患者ではCVDのリスクが25%増加すると言われています(Emingil, 2000)
また、歯周炎とCVDは、多数の共通の遺伝的要因(Loos & Van Dyke, 2020)および環境リスク要因(例えばタバコなど)(Seitz, 2019)を共有しています。
昨年発表された別のシステマティックレビューでは歯周病の基本的な治療(歯石やプラークの除去)を行うことで全身の炎症反応を示すCRPが平均で0.69mg/L低下し全身の健康に寄与すると言われています。(Luthra, 2022)
脂質異常症や動脈硬化、他のCVDにより医科を受診されている方は歯周病のケアを検討されてみるのも1つかもしれません。またすでに重度の歯周病になっている方はCVDにかからないためにも積極的に治療をしましょう!