「最近、歯がしみる」
「歯の根元が削れてきた気がする」
「詰め物や被せ物がよく欠ける」
「朝起きるとあごが疲れている」
このような症状がある方は、歯ぎしりや食いしばりが関係しているかもしれません。
歯ぎしりというと、寝ている間にギリギリ音を立てるイメージが強いかもしれません。しかし実際には、音が出ないタイプの食いしばりもあります。仕事中、運転中、スマートフォンを見ているとき、緊張しているときなどに、無意識に上下の歯を強く合わせている方も少なくありません。
本来、上下の歯がしっかり接触する時間は、食事のときなど限られています。ところが、歯ぎしりや食いしばりがあると、歯に長時間強い力がかかります。その結果、歯の表面がすり減ったり、歯に細かいヒビが入ったり、詰め物や被せ物が壊れやすくなったりすることがあります。
「ブラキシズム」は歯をすり合わせたり、噛みしめたり、強く噛み込む習慣のことであり、この力は歯と歯周組織の両方に損傷を与える可能性があります。
歯ぎしりや食いしばりで起こりやすい変化の一つが、歯のすり減りです。奥歯の噛む面が平らになってきたり、前歯の先端が欠けたように見えたりすることがあります。本人は気づいていなくても、歯科検診で「歯ぎしりの跡がありますね」と言われることもあります。
また、歯の根元が削れて、冷たいものがしみることもあります。歯の根元の削れは、虫歯ではないのに歯の硬い組織が失われる状態です。これには、強すぎる歯みがき、酸性の飲み物、歯ぐきの下がり、噛む力など、いくつかの原因が関係します。
ここで大切なのは、根元の削れや歯ぐき下がりを、すべて噛み合わせのせいと決めつけないことです。
以前から、強い噛む力によって歯の根元がたわみ、削れが起こるという考え方があります。これを「アブフラクション」と呼びます。しかし、外傷性咬合力がアブフラクションや歯肉退縮の原因として提案されてきたものの、因果関係は不明確で、十分なエビデンスがないため確定診断はできないと現在の見解ではされています。
つまり、「歯の根元が削れている=噛み合わせが悪い」と単純には言えません。多くの場合、原因は一つではなく、複数の要素が重なっています。
たとえば、硬い歯ブラシで強く磨いている方は、歯ぐきが下がったり、根元が削れたりしやすくなります。炭酸飲料、スポーツドリンク、柑橘類、酢の物など酸性の飲食物を頻繁にとる方では、歯の表面が弱くなりやすいことがあります。そこに歯ぎしりや食いしばりの力が加わると、歯への負担がさらに大きくなる可能性があります。
歯ぎしりや食いしばりのサインとしては、歯のすり減り、歯の欠け、詰め物の破損、知覚過敏、朝のあごの疲れ、こめかみの痛み、頬の内側の白い線、舌の横についた歯型などがあります。これらがある場合は、無意識のうちに強く噛んでいるかもしれません。
対策としてよく使われるのが、ナイトガードです。ナイトガードは、寝ている間に使うマウスピースで、歯と歯が直接強くぶつかるのを和らげる役割があります。歯ぎしりそのものを完全に止めるものではありませんが、歯のすり減り、欠け、詰め物の破損を防ぐ目的で使われます。
日中の食いしばりには、まず「気づくこと」が大切です。集中しているときに上下の歯が触れていないか(TCH, Tooth Contact Habitと言います)、肩に力が入っていないかを確認してみましょう。普段は、唇は閉じていても、上下の歯は少し離れているのが自然です。
歯みがきの力を見直すことも重要です。「しっかり磨く」と「強く磨く」は違います。やわらかめの歯ブラシを使い、軽い力で小さく動かすことが、歯と歯ぐきを守るポイントです。
歯ぎしりや食いしばりは、虫歯や歯周病のように目に見えやすい病気ではありません。しかし、毎日少しずつ歯に負担をかけ、気づいたときには歯がすり減っていたり、しみる症状が出たり、被せ物が壊れたりすることがあります。
「歯がしみる」「歯が削れてきた」「詰め物がよく取れる」「朝あごが疲れる」という方は、虫歯だけでなく、噛む力の問題もチェックしてみることが大切です。歯を守るためには、歯をきれいにするだけでなく、歯にかかる力を上手にコントロールすることも必要です。
