虫歯が深いと歯科医院に行った時に「これはもう抜歯しなきゃいけないですね」と言われるようなケースも多々あるかと思いますがその中でも条件が整ってさえいれば、歯を保存できる方法があり、今回そちらをご紹介させていただきたいと思います。
被せ物の中で気付かないうちに虫歯が進んでしまうというケースがあります。今回はその例になるんですが、まず主訴は「見た目が気になります」ということで患者さんが来院されました。
この写真を見てみると分かる通りまず左右の見た目の非対称性被せ物があったりとか虫歯があったりとかということで見た目が気になるということを仰られていました。
これは被せ物と虫歯を全部取った後の写真ですが左上の2番目と3番目の歯がかなり虫歯が進んでいて歯ぐきよりもさらに深く虫歯が進行していたというのが見受けられました。通常はこの状態だと保存が不可だと基本的には抜歯が推奨されます。
それはなぜかというとここに被せ物を頑張ってやり替えようとした時に被せ物のためには歯の土台の高さが必要(歯肉から出ている歯の高さ、専門用語ではフェルール)です。このフェルールの幅が1.5~2㎜必要というのが2005年のTanなどの多くの論文でいわれています。
歯ぐきよりも出ているご自身の歯の高さがないと歯根破折(根っこが割れる)、土台や被せ物自体の脱離が後のち使っていくと起こるというのがMorganoの研究などで、今までいわれています。1.5~2㎜歯の高さが歯ぐきよりも出ていなければいけないというのがこういった残根(根っこだけ残っている歯)での修復においての大事なポイントとなってくるわけです。
そのためには外科的な処置が必要になるんですが歯ぐきを開けてあげて歯の周りの骨を少し落としてあげて縫合してあげる。そうすると歯をいじらずに歯ぐきを下げてあげて歯の頭出しができるというのがこの術式となっております。具体的にはこれは歯冠長延長術と呼ばれております。
この縫合後を見てわかるように、術前よりもかなり歯肉からかなり歯が出ているのがわかるかと思います。その後しっかり歯の頭出しができたところで土台をしっかり作ってあげた後被せ物を左右対称的にきれいに作った写真がこちらです。
被せ物を再作製する上で機能だけじゃなくて審美もかなり改善しました。こういった根っこだけ残っているような保存が一見すると難しいようなケースにはこの術式は有効なんですが全ての歯に適用できるわけではありません。
具体的にはもともと根が短くなっているケース、根の周りを支えている骨が歯周病や何らかの理由でもともとかなり骨が失われてしまっているケース、あるいはもうある虫歯自体が深すぎて治しきれないというようなケースなどにはこの歯冠長延長術が少し難しいというところがありますので、必ず自分自身で決めることなく、歯科医院で相談の上、可能な場合は深い虫歯を残すことも検討されるといいかなというふうに思います。